2012年4月28日土曜日

3月30日(金) 労働者派遣法の骨抜き改正で一体何が変わるというのか:五十嵐仁の転成仁語:So-netブログ


 どうして、このような法律を作ったのでしょうか。28日に成立した改正労働者派遣法のことです。
 ほとんど改善点はありませんから、「改正」とは言えません。一体何のために成立させたのか、理解に苦しむような法律です。

 問題が多いとされていた製造業派遣や登録型派遣は禁止されません。違法派遣があった場合、派遣先が直接雇用を申し込んだと見なす規定は3年後まで先送りされましたから、当面は現状のままです。
 批判が集中していた日雇い派遣についても、30日以内の契約を原則禁止とするにすぎません。高齢者や主婦などは除外されていますから、これらの人々については現状のままです。
 要するに、この改正法が施行されても、派遣労働に対する規制が強化されることはなく、ほとんど現状のまま放置されることになります。


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 そもそも、労働者派遣法の改正が必要になったのは、派遣労働の現状が多くの問題を生んだからです。その問題を解決するための改正法でした。
 ところが、成立したのは、ほとんど役に立たない「ザル」法です。「ザル」では水をすくうことができませんから、水はそのまま残ります。
 つまり、派遣労働によって生み出された数々の問題は解決されることなく、そのまま残ることになります。雇用の不安定さ、非正規労働の拡大、貧困化と格差の拡大は是正されず、日本社会の崩壊はさらに進行することになるでしょう。


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 それなら、役に立たない法律をどうして成立させたのでしょうか。貴重な国会審議の時間を使って(というほどの審議時間は、実際にはかけられませんでしたが)。
 一つには、派遣労働問題を解決するために努力しているというポーズを示すためでしょう。派遣切りや年越し派遣村などでこの問題が社会の注目を浴び、世論の批判も強まるにつれて何らかの対応をせざるを得なくなったため、当初の政府案のような、かなり規制色の強い原案が作成されました。
 もう一つには、自公との協調を印象づけるためでしょう。財界や派遣業界の意を受けた自公両党の抵抗によって、派遣法改正の政府案は店ざらしにさせられ、継続審議が続きました。ここに来て一挙に成立に向かったのは、政府案を大きく換骨奪胎させた自公案を民主党が丸呑みしたからです。


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 このような譲歩によって、「改正」案はその実態を失いました。それにもかかわらず民主党が大きく妥協したのは、自公に歩み寄ることによって別の目的を達成しようとしたからです。
 その目的は、消費税増税法案への同調です。現在の民主党の国会対応の全ての焦点はここに据えられており、野田首相は消費税を成立させるためなら「悪魔」とでも手を結ぶ覚悟を固めているからです。
 つまり、労働者派遣法は消費税増税法案のための人身御供の一つにされました。それが派遣労働者を救うことになるのか、その労働条件を改善できるのか、貧困化の解決に役立つのかなどということは、全く問題にされないまま、国会対策の一方策として強行成立させられたというわけです。


 しかし、派遣労働が引き起こした問題そのものは残りますから、いずれ再改正が必要になるでしょう。ちゃんとした抜本改正をすれば一度で済むのに、役にも立たない改正をしたから、また改正が必要になる。何という無駄でしょうか。
 派遣労働の規制緩和によって、「堤防」に穴が開いて修理しなければならなくなった。だから、本来であればきちんとした工事を始めなければならないところに、今回の改正法は「石ころ」を一つ置いた程度にすぎません。水漏れの勢いで、すぐに押し流されてしまうでしょう。
 民主党政権は、このまま「堤防」の決壊を放置し、日本社会が水浸しになるのを眺めているつもりなのでしょうか。もし、何とかしたいというのであれば、再度の抜本改正によって、本格的な「土嚢」積みを行うべきでしょう。


 働くものが幸せになれず、豊かさも享受できず、貧困化が拡大し、格差が増大するような「水浸し」の社会では、企業も存立することは困難でしょう。これを改善するためには、「ザル」法ではなく、実際に水をすくうことができるような法律をつくること、排水に役立つような立法こそが必要なのだということに、企業経営者も気がつくべきではないでしょうか。



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